「下を、向くんじゃねぇぇぇ!」"shita wo mukun ja neeee!"
ハイキュー!! に出てくる監督さんたち選手たちに向かって言う言葉の中には、心に残る名言も多くあります。その中でも特に私が感動を覚えた名言を紹介していきます。
その1 これまでのハイキュー!! の中で最も読者を泣かせたであろう名言:烏養コーチ
「下を向くんじゃねえぇぇ!
バレーは常に上を向くスポーツだ!!」
これは、春の高校バレー県予選決勝戦で、烏野高校が県の再強豪と言われる白鳥沢高校と対戦した際、最終セットで烏野高校が苦戦し選手たちの気分が重くなったときに、烏野高校の烏養コーチが絶叫する言葉です。バレーを真剣にやっていた経験のある者ならだれでも涙が出てしまう名言中の名言です、
英語版漫画:Don’t!! Look!! down!! Volleyball is a sport where you always look up!!
Crunchyroll 字幕:Don’t you dare look down! Volleyball is a sport where you’re always looking up!
これは訳すのが難しいというわけではありませんが、特にご紹介したい名分ですのでこのコーナーで取り上げています。結果はマンガもアニメもどちらも良いと思いますが、少しだけ違いがあります。
まず、「下を、向くんじゃねぇぇぇ!」です。漫画英訳の方は、一言ごとに “!!” で強調されて絞り出すような絶叫感が伝わってきて、とても良い訳だと思います。字幕ではその絶叫感を表すのに、普通の否定命令文ではなく、 “Don’t you dare ~” を使っています。“Don’t you dare” は強い否定命令文で、「~したら承知しない」という強迫的な意味が含まれています。この構文を使うことで、「ねえぇぇ!」の絶叫部分を表しています。
もう一つの違いは、「バレーは、常に上を向くスポーツだ‼」の下線部分の訳には、漫画では現在形、アニメ字幕では現在進行形が使われている点です。現在進行形の方が原文に近い空気を醸し出していると思います。シンプルに “You always look up” と現在形にすると、試合中は「常にほぼ継続的に上を向いている」という感じが出ません。それに対し現在進行形を使うと、コート上でプレーをしている選手たちの視線はいつでも上を向いているという臨場感を行間から滲み出させることができます。ほぼそっくりな二つの文でも細かく比べるとこのような差があるのですね。
さて、英訳例の中の“where” にも少し触れます。この文を私が頭の中で英訳をしたときのは、”Don’t look down! Volleyball is a sport in which you always look up!” でした。文法的には “in which” の方が正しいはずですが、おそらく”where” も慣用的に使われているのでしょう。